古代エチオピアの王妃・カシオペヤ座

Mの字を引き伸ばしたような形で並んでいるのがカシオペヤ座です。
日本では「山形星」という別称で呼ばれています。
カシオペヤは、ギリシャ神話に登場する古代エチオピアの王妃の名前です。
とても美しいカシオペヤの娘であるアンドロメダも、相当な美しさでした。
しかしある日「私の娘は海の妖精(ポセイドンの孫)より美しい」と自慢しすぎたために、海の神ポセイドンの怒りを買ってしまいます。
そして巨大なくじら「ティアマト」がエチオピアの海に現れ、海を荒らすようになってしまいました。
海の神の怒りを鎮めるには、娘のアンドロメダを生贄(いけにえ)として差し出す必要がありました。
そのアンドロメダを救い出したのが、ペガススに乗った勇者ペルセウス。
ペルセウスは、メデューサの首を化けくじらに見せて石に変え、アンドロメダを救い出しました。
そしてペルセウスとアンドロメダは結婚し、いつまでも幸せに暮らしたのです。

そのアンドロメダ座の腰あたりにあるのが、アンドロメダ銀河です。
暗い空であれば、肉眼でもうっすらと淡い楕円形の光が見えます。
アンドロメダ座は地球からは約250万光年の距離にあり、うずを巻いているように見えるため「うずまき銀河」とも呼ばれています。
冬の星座
ゼウスの恋から生まれたおうし座

冬の天体観測では、まずおうし座を見つけてみましょう。
おうし座を見つけるには、オレンジ色の一等星をふくむV字型の星の並びを探します。このV字の部分が牛の顔にあたり、一等星が牛の目になります。
その上にあるのが長い角、下にあるのが前脚です。
おうし座は、大神ゼウスがフェニキア国の王女・エウロペ姫を乗せて海を渡ったときの姿とされています。
花つみをしていたときに美しい牛に出会ったエウロペは、牛のことをすっかり気に入り背に乗り、一緒に遊びます。
しかし、その牛こそがゼウスだったのです。
ゼウスはエウロペをクレタ島まで連れていき、その正体を明かしました。
エウロペはその後、クレタ島の王と結婚してミノスなど3人の子どもを産み、幸せに暮らしたそうです。
たどり着いた土地であるヨーロッパ大陸(Europe)の由来は、エウロペの名といわれています。
オレンジ色に輝く星は、一等星のアルデバランです。
日本では「つりがね星」とも呼ばれます。
そして、おうし座の肩部分にある小さな星の集まりがプレアデス星団、日本では「昴(すばる)」と呼ばれるものです。

プレアデス星団は、約5,000万~6,000万年前に誕生した若い星の集まりです。
肉眼では6つほどの星しか見えませんが、望遠鏡でのぞくとたくさんの星が見えます。
愛する人に弓矢でうたれたオリオン座

右肩あたりに一直線に並ぶ3つの星を「オリオンの三ツ星」といいます。
これは、巨人オリオンの腰のベルト部分です。この3つの星を囲むように、明るい星が並んでいます。左上のオレンジ星が一等星のベテルギウス、右下の白く明るい星が一等星のリゲルです。

海の神ポセイドンの息子、オリオン。
とても強く、また美男子でもあったのですが、「この世界で自分にかなうものはいない」とうぬぼれた考えを持つようになり、神々の怒りを買います。
そして、大地の女神ガイアはさそりを使って、オリオンを殺させてしまったのです。
また、オリオンについては別の神話もあります。
月の女神アルテミスに愛されたことから、アルテミスの双子の兄・アポロンの反感を買ったオリオン。
アポロンは、さそりに追われたオリオンが海を渡っているときに出ていた頭を、金色の岩だと言い「いくら弓の名人のおまえでも、あの岩を射ることはできないだろう」とアルテミスをけしかけます。
そしてアルテミスはアポロンにだまされ、オリオンを弓矢で殺してしまいました。
娘のアルテミスを哀れに思った父・大神ゼウスによって、夜空に上げれられたオリオンの近くを、月(アルテミス)が通っていきます。
オリオン座の和名は「鼓星(つづみぼし)」です。

確かに、似ていますね。
いつも一緒の仲良し兄弟・ふたご座

左にある明るい2つの星が、双子の頭にあたります。
下にある黄色っぽい星が1等星のポルックス、上にある白っぽい星が二等星のカストルです。
ギリシャ神話ではポルックスは剣とボクシング、カストルは馬術の名人です。
二人はいつも行動をともにしていましたが、カストルは普通の人間、ポルックスは大神ゼウスの血を引いて不死身だったのです。
ある日二人は、戦利品である牛を巡ってイダスとリュンケウスという兄弟と争いになり、カストルはイダスに殺されてしまいます。
ポルックスは、カストルのかたきを討ちましたが、悲しさのあまり自分も命を断とうとします。
この二人の兄弟愛に心をうたれた大神ゼウスは、カストルにポルックスの不死身の命を半分与え、二人を星座にして一緒にいられるようにしたのです。
ふたご座といえば「ふたご座流星群」。
「ふたご座流星群」とは三大流星群の中のひとつで、他の2つは「しぶんぎ座流星群」と「ペルセウス座流星群」です。
12月上旬から流れ始め、12月15日頃に観測しやすくなるそうです。
ぜひ、ギリシャ神話のカストルとポルックスのことも思い浮かべながら、眺めてみてはいかがでしょうか。
夜空のストーリーに想いをはせよう
普段、何気なく見上げている夜空。
そこにはたくさんの星座があり、その星座にまつわる神話があります。
これまでの文章を読んでいてお気づきかもしれませんが、神話はひとつひとつが独立した話ではなく、別の神話に登場してきた娘や息子が主人公になるなど、つながっているのです。
神話の話を読んでから夜空を見上げてみると、「ああ、あの月はオリオンに会いたがっているのかもしれない」などと、また違った見え方をするはず。
今回ご紹介したもの以外にも、たくさんの神話がありますので、ぜひ調べてみてください。